車の話が急に楽しくなる瞬間の一つは、駆動方式を見分けられるようになったときだ。FR、FF、MR、四輪駆動。略号は無味に見える。中身は、どこにエンジンがあり、どの輪が地面を蹴るか、という性格の設計図である。
FFはフロントエンジン・フロント駆動。室内が広く取りやすく、雨でも安定しやすい。多くの普通車がここから始まる。FRはフロントエンジン・リア駆動。前で燃やして、後ろで押す。荷重が移動する感覚が、スポーツカーや後輪駆動のセダンで喜ばれる理由だ。
エンジンの位置と、駆動する輪。この二つを見るだけで、車の会話は具体になる。
MRはエンジンが座席の後ろ。フェラーリや一部のスーパーカーが取る、運動性能寄りの配置。四輪駆動は、路面が悪いときや、大出力を地面に伝えるときに強い。同じ四輪駆動でも、乗用の安定志向と、スポーツのトラクション志向は別物だ。
試乗で「乗り味が違う」と感じたとき、サスペンションやタイヤの前に、駆動方式を疑ってよい。曲がるときのノーズの入り方、加速で後輪が沈む感じ。言葉にできると、好き嫌いが単なる印象で終わらない。
日本の道で毎日乗るならFFや四輪駆動が合理的なことも多い。それでもFRの話ができると、車は道具以上の話題になる。略号は、教養の入り口にしてちょうどいい。
