テーラードと聞くと、仕立て、という響きが先に来る。中身は、ジャケットの骨格だ。肩の位置、胸の厚み、ウエストの絞り、着丈。布が同じでも、骨が違うと、別人に見える。
既製でも、テーラードの文法は生きている。サイズの数字より、肩が落ちていないか。ボタンを閉めたとき、生地がXに引っ張られていないか。鏡の正面と、真横。二方向で、骨格は見える。
良いジャケットは、柄ではない。立ったときの、肩の線だ。
イギリス、イタリア、アメリカ。肩の作りが違う、という雑な地図はある。硬い肩、自然な肩。どちらが上でもない。自分の骨格と、仕事の場に、どちらが静かに合うか。
カジュアルな時代でも、一本のきれいなジャケットは、会食を救う。全部を仕立てにする必要はない。骨格が分かっていると、店頭のハンガーが、急に読める。
服の教養は、ブランドの序列より、線の話に近い。テーラードは、その線の、いちばん古い教科書だ。
