日本の美術館で、日本画、洋画という言葉が残っている。主題の東洋西洋、というより、材料の家族だ。岩絵具、膠、紙や絹。油、キャンバス。乾き方も、直せる範囲も、光の反射も違う。

日本画は、余白と、線と、顔料の粒子が、空気を作ることがある。洋画、とくに油彩は、層を重ねて、深みを作ることがある。どちらが細いか、は不毛だ。物理が、美学を支えている。

日本画と洋画は、主題の対立ではない。絵の具の、物理の対立に近い。

明治以降、両方を行き来した画家は多い。洋装の人物を、日本画の材料で描く。逆もある。境界は、パスポートではなく、アトリエの棚だ。

保存も違う。湿度、光。展示ケースの理由は、神秘ではなく、材料の弱さだ。キャプションの「紙本着色」は、地味で、いちばん具体的な情報である。

部屋を移動するとき、素材が変わったかを見る。主題が似ていても、表面が違う。日本画と洋画は、対立する主義というより、二つの道具箱だ。