絵は、だいたい正面から見る。彫刻は、回れる。回らないと、半分しか見ていない。影、背面、台座の高さ。展示室の動線が、作品の一部になる。

石、木、金属、土。素材の重さが、テーマを先に語ることがある。磨かれた表面と、鑿の跡。触れてはいけないことが多い。触れない代わりに、目で、手触りを想像する。

彫刻の正面は、入口だ。作品は、歩いた角度の合計にある。

屋外の彫刻は、天気の作品でもある。昼と、夕方で、輪郭が変わる。写真の一点は、一日の、一つの時刻だ。

人体の彫刻は、ルネサンスから、現代の断片まで、長い家族だ。欠けること、歪むこと、実物大でないこと。完成した美だけが、彫刻ではない。

部屋に入ったら、まず一周する。座って、別の一周。絵の前で止まる習慣を、一度ほどく。彫刻の教養は、歩行だ。