東京の住まいの話は、すぐに山手線の内側、という呪文になる。確かに、環状の内側は需要が厚い。ただし内側は一枚の高級地ではない。ビジネスの拠点、夜の繁華、静かな住宅、再開発の余熱。駅ごとに性格が違う。
見るべきは、通勤の向きだ。どこへ、何分で出るか。山手線に乗れることと、乗ったあと何分で着くことは、別の価値だ。内側でも、乗り換えが多いと、外側の直通に負けることがある。
内側だから高い、ではない。どの駅の、どの出口かが、生活を決める。
土地の履歴も効く。昔からの住宅地、オフィスが侵食した街、川と坂。同じ区でも、台地と低地で水と風が違う。ブランドの地名だけを買うと、生活の感触が後から来る。
資産性の話と、住み心地の話は、重ねてもよいし、分けてもよい。内側は売りやすい、は大枠だ。ただし自分が朝夜そこにいるなら、売りやすさより先に、騒音と店と、日当たりを見る。
地図を開いたら、環状線で色を塗らない。駅名を点で置く。内側という単語は、会話の導入にして、結論にしない。東京は、それくらい細かい。
