物件は、面積と駅と価格で比較できる。街の空気は、比較表に載らない。学区、店の顔、夜の明るさ、坂の上からの風。住んでから効いてくる差ほど、買い直しがきかない。
子育てするなら、学校の話は避けられない。ただし偏差値だけが空気ではない。子どもが歩く道、放課後の場所、親の時間。単身でも、週末の商店街の密度は、暮らしの満足に直結する。
良い街は、駅距離だけでは説明できない。朝の歩道で分かる。
再開発の完成予想図は、未来の空気の仮説だ。仮説は当たることもある。当たるまでの数年を、自分が払うかも見る。静かさを買ったつもりが、隣の工事を買うことがある。
内見は、物件の中だけで終わらせない。最寄りを、反対側の改札からも出る。昼と、できれば夜。平日と、休日。同じ路面が、別の街に見える。
東京の住まいの教養は、相場観だけではない。数字にならない質を、言葉にできることだ。学区と空気は、ふわっとした話に見える。実際は、毎日の歩数が決まる、かなり具体的な話である。
