社交の場で高級ワインの名前が飛ぶことがある。ロマネ・コンティ、ペトリュス、ドン・ペリニヨン、サッシカイア、オーパス・ワン。知っているつもりでも、それがどの丘の、どのブドウかは、案外あやふやだ。

五本を地図に置く。ロマネ・コンティはブルゴーニュ、ヴォーヌ・ロマネのピノ。ペトリュスはボルドー右岸、ポムロールのメルロー。ドン・ペリニヨンはシャンパーニュの、瓶内二次発酵の頂点の一つ。サッシカイアはトスカーナ、ボルドー品種で造ったスーパータスカン。オーパス・ワンはナパの、ボルドー発想のカベルネ主体。

高級ワインを知る、とは、名前を並べられることではない。どこ産の、何品種かを言えることだ。

こう置くと、高級ワインは「高いもの一覧」ではなく、産地の代表選手になる。ブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュ、イタリア、新世界。五つの点があれば、その先の知識は枝として伸びる。

会食で必要なのは、評価額を言うことではない。ペトリュスが出たときに「右岸のメルローだよね」と内側で分かること。シャンパーニュを泡の総称と混ぜないこと。それだけで、会話の温度は変わる。

名前は入口にして、地図に戻す。tashinamiのワイン講座は、その置き直しのために存在する。一本の伝説より、五つの住所を持っている人の方が、長く楽しめる。