日本酒の原料の米は、食卓の品種とは別の顔を持つことが多い。心白、粒の大きさ、溶け方。麹菌が入りやすく、発酵の設計がしやすい。その代表が、山田錦だ。兵庫県を中心に、大吟醸の世界で名前が出る。
雄町は、岡山などが知られる、古い酒米だ。骨格、旨味、少し力のある印象を持つ、と語られやすい。同じ純米でも、米が変わると、肴の向きが変わる。
酒米は、食べるための米ではない。発酵のための、設計された米だ。
五百万石、美山錦、愛山。名前は増える。最初は二人で足りる。山田錦の綺麗、雄町の厚み。雑な対比でも、ラベルの品種欄が、急に読める。
米だけではなく、水と、酵母と、人だ。酒米の名前を言えることは、入口であって、結論ではない。それでも、ブドウ品種を言えるのと同じくらい、会話は具体になる。
産地の米を、その土地の酒で飲む。ワインの村名に近い楽しみ方が、日本酒にもある。山田錦と雄町は、その地図の、最初の二つのピンだ。
