吟醸酒を飲んで、バナナ、リンゴ、梨、花、と感じることがある。あれを米の味だと思うと、少しずれる。多くは、酵母が発酵の過程で作る香りだ。低温で、丁寧に、ゆっくり。その条件が、香りの線を細くする。
だから精米歩合と、吟醸香は、セットになりやすい。削って、雑味を減らし、香りを見せる。見せない造りもある。香らない酒が、劣っているわけではない。旨味と、酸と、食事の側に立つ酒だ。
吟醸香は、花の名前ではない。低温で、酵母が書いた、香りの線だ。
グラスをワイングラスにすると、吟醸香は立ち上がりやすい。猪口は、温度と、口への量の話。香りを主題にするなら、器も、チャンネルの一部だ。
好き嫌いは、はっきり分かれる。香りの酒が苦手な人は、純米の厚み側へ。好きな人は、温度を上げすぎない。両方ある棚が、日本酒の棚だ。
バナナとリンゴ、という言葉を持っていると、香りの話は急に具体になる。上手い言い回しではなく、酵母の仕事を、果物の名前で指している。それだけで、十分に詳しい。
