ウイスキーは、ストレートが格好いい、という空気がまだある。度数が高い原酒ほど、その空気は強い。ただし高いアルコールは、香りを閉じることもある。数滴の水で、果実や、樽や、煙が立ち上がることがある。
カスクストレングスは、樽出しに近い度数だ。そのまま楽しむ人もいる。開かないと感じたら、ガラスの棒や、小さじの水。量は、味見しながら。一度に割ると、戻りにくい。
水を足すのは、逃げではない。アルコールの扉を、少し開けることだ。
氷は、温度と、徐々に溶ける水だ。香りは閉じ、味は丸くなることが多い。夏のハイボールは、別の飲み方として割り切ってよい。どれが正しいかより、今夜の目的だ。
バーで「お好みで」と水が付くのは、失礼ではない。自分の鼻で、開く点を探す。経験のある人ほど、加水を恐れない、という場面は実際にある。
ストレート、加水、ロック、ハイボール。四つは、優劣の階段ではない。同じ蒸溜所の、四つの季節だ。香りを開く、という目的を持てると、水は敵ではなくなる。
