ボルドーの話は、格付けやシャトー名から始まりがちだ。でも最初に持つべきなのは、もっと粗い地図である。ジロンド川を挟んで、左岸と右岸。これだけで、ボトルの性格のかなりの部分が決まる。
左岸、とくにメドックは砂利が多い。水はけがよく、カベルネ・ソーヴィニヨンが中心になる。色が濃く、タンニンがしっかりして、時間が味方になるワインが多い。右岸のサンテミリオンやポムロールは粘土が効き、メルローの存在感が大きい。口当たりが丸く、若い時点でも親しみやすい。
左岸はカベルネ、右岸はメルロー。川を一本覚えると、ボルドーは急に単純になる。
だからリストで「ボルドー」とだけ書いてあっても、産地の欄を見る。ポイヤックやマルゴーなら左岸。ポムロールなら右岸。シャトー名を全部覚える必要はない。岸が分かれば、料理との相性も想像しやすくなる。
甘口のソーテルヌも、同じボルドーの地図の南にある。貴腐という、カビが糖を濃縮する現象で造られる白だ。食前酒やデザートだけではなく、フォアグラやブルーチーズと合わせる古典がある。甘口を「別世界」にしないと、ボルドーは立体になる。
会食でボルドーを頼むなら、予算の帯を決めてから岸を選ぶ。重い肉には左岸、柔らかな料理には右岸、という雑な指針でも、何も言えない状態よりずっとましだ。細かい格付けは、そのあとで追いついてくる。
