厚いワインリストを渡されると、視線はつい右端の数字へ行く。予算を確認するのは悪いことではない。ただ、ソムリエが最初に見るのは、たいてい別の場所だ。産地と品種。そのワインが、世界のどこに載るかである。

フランスならブルゴーニュかボルドーか、イタリアならピエモンテかトスカーナか。品種が見えていれば、味わいの骨格はだいたい想像できる。ピノは香りと繊細さ、カベルネは骨格、ネッビオーロはタンニンと香り。価格はそのあとに来るフィルタだ。

最初に見るのは値段ではない。どこで、何のブドウか、だ。

次に見るのは、その店の料理との距離。脂の多い肉に細いピノを合わせることもできるし、白で切り込むこともできる。正解は一つではない。ただし「高いから良い」「知っている名前だから安心」は、判断を粗くする。

分からないときは、予算の上限と、今夜食べたいものの印象を短く伝える。重い、軽い、魚、肉。ソムリエは、その二点からリストを折りたたんでくれる。全部自分で決めなくていい。ただし、返ってきた提案を地図の上で受け取れると、経験が蓄積する。

tashinamiで先に持つのは、この読み方の型だ。リストは試験問題ではない。産地、品種、価格、料理。この順で目を動かせるようになると、会食のワインは急に楽になる。