ドイツワインと聞くと、甘い、と思い浮かべる人はまだ多い。実際、甘いものもある。ただ、いま世界で評価されているドイツのリースリングには、キリッと乾いた辛口がたくさんある。先入観を一度置くと、急に面白くなる産地だ。

ラベルにカビネット、シュペートレーゼ、アウスレーゼと書いてあることがある。プレディカーツと呼ばれる、収穫時の熟度の階段だ。遅い収穫ほど糖度が高い。ただし残糖を全部残すとは限らない。発酵をどこまで進めるかで、辛口にも甘口にもなる。

カビネットやシュペートレーゼは、甘さの名前ではない。ブドウの熟度の名前だ。

だからプレディカーツを「甘さランク」として覚えると、現場で外す。甘辛を見るなら、トロッケン(辛口)などの表記、アルコール度数、そして生産者のスタイルを合わせる。同じシュペートレーゼでも、食事に合う辛口もあれば、デザートに寄るものもある。

品種の主役はリースリングだ。酸がきれいで、香りに石油、花、柑橘が出ることがある。その酸があるから、残糖があってもべたつかない。川沿いの急斜面、スレートの土壌。ドイツは、北の涼しい場所で白を極めた国、という位置に置くと覚えやすい。

会食でドイツを頼むなら、「リースリングの辛口」と一言添えれば十分すぎる。甘いものばかり、という空気を、静かに訂正できる。